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離婚と住宅ローン

更新日:7月22日

離婚を考えるときに多くの方が悩まれるのが「住宅ローンが残っている家をどうするか」という問題です。


特に、まだローンの残債がある場合は、

・「売ってしまった方がいいのか?」

・「家の名義は夫だけど、妻には権利がないのか?」

・「このまま住み続けることはできるのか?」


など、不安や疑問を抱くのも当然のことです。


今回は、住宅ローンの残債状況に応じて「オーバーローン」と「アンダーローン」に分けて考える方法や、たとえ名義人でなくても「財産分与」の対象になるケースがあることなど、離婚時の住まいの取り扱いについてわかりやすく整理してみます。


住宅ローンが残っている場合の財産分与の考え方


1. オーバーローンのケース(売却してもローンが完済できない状態)


いわゆる「オーバーローン」とは、家を売っても住宅ローンが残ってしまう状態を指します。

このようなケースでは、「家を売ってローンを清算」という選択が難しく、次のような選択肢が考えられます:


・ローン名義人が引き続き住みながら返済していく

・住み続ける側が名義を変更して返済を引き継ぐ(※金融機関の審査や同意が必要)

・名義人が返済し、別の配偶者(例:妻)が住み続ける

 →この場合も、住む人が名義人でないため、金融機関との事前協議が必要となります

・すぐには売却せず、将来的に住宅価格が上がって「アンダーローン」になるのを待つ


それぞれの選択にはメリット・デメリットがあるため、感情だけで判断せず、将来の生活設計を見据えて決めることが大切です。


アンダーローンのケース(売却すればローンが完済できる状態)


家の評価額が住宅ローンの残高を上回っている場合、「アンダーローン」となります。

この場合は売却によってローンを完済できるだけでなく、手元にお金が残ることもあり、プラスの財産として財産分与の対象になります。


対応としては、主に以下のような方法があります:


・家を売却して、残ったお金を夫婦で分ける(原則は2分の1ずつ)

・売却せずにどちらかがそのまま住み続ける

 → その場合、住む側が家の評価額の半分をもう一方に支払う形で調整します


いずれのケースでも、話し合いと書面化が重要になります。


「名義が夫=夫の家」とは限らない


「住宅の名義が夫になっているから、この家は夫の所有物」と思ってしまう方も多いですが、そうとは限りません。


たとえ名義が夫であっても、結婚生活の中で夫婦が協力して築いた財産であれば「共有財産」として扱われ、財産分与の対象となります。


また、妻が収入を得ていなかったとしても、家事や育児によって家庭を支えていた場合には、貢献があったものとみなされ、家の一部の価値を請求できるケースもあります。


離婚にあたっては、「名義が誰か」よりも「夫婦で築いてきた財産をどのように分けるか」を冷静に整理していくことが重要です。

住宅は高額な財産であるだけに、感情に任せたままでは後悔する可能性もあります。



意外と見落としがちな注意点


住宅ローン控除は、ローンを組んでいる人が実際にその家に住み続けていることが条件です

太陽光パネルを設置している場合、売電契約などの名義変更手続きも忘れずに行いましょう


細かい部分まで確認を怠らずに手続きすることで、後からのトラブルを防ぐことができます。

 


子どもの気持ちにも目を向けて


住宅ローンや財産分与の話は、大人にとっては「資産」「契約」「返済」といった現実的なテーマかもしれません。ですが、お子さんにとってはその家が「大切な思い出の場所」であり、「日常の安心の場」であることを忘れてはなりません。


住宅をどうするかは、金銭的な条件だけでなく、お子さんの生活や気持ちにも配慮して決めていくことが大切です。


最後に

取り決めは、必ず書面に残しておきましょう。


離婚後、「そんな約束していない」「払ってくれない」といった金銭的なトラブルが起こることは珍しくありません。


誰が家に住むのか、住宅ローンは誰が返済するのか――

こうした取り決めは、離婚協議書や公正証書にしっかりと記載しておくことが非常に重要です。


特に住宅のような高額な財産が関わる場合は、口頭の約束では後々のトラブルにつながりやすくなります。きちんと書面に残しておくことで、万が一のときにも自分や子どもを守る手段となります。


当事務所では、住宅ローンを含む財産分与の取り決めを反映した離婚協議書・公正証書原案の作成をお手伝いしています。

気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 
 
 

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